究め道

色々感じた事を書くブログです

『安全』を考える

昨日、日本橋で建設中の建物から鉄骨が落下し

複数の方が死傷する事故が起きました。

建設現場は色々な危険が孕んでいるもので、

だからこそ安全に作業を遂行する事が最も基本的な事として

励行されているものだと思っています。

自分の会社もかつてそういう分野に携わっていたので

端くれとして知っている事もあります。

ただ、こうして事故が起きてしまったのは残念ですし

今後どの様になっていくのかは気になるところです。

 

昨日の事故に限らずですが、最近建設関係の事故等をよく耳にする様になりました。

業界の人間だから、という事ではなく

SNS等で情報拡散が早くなったのも一因だと思いますが、

こうなった背景を考える必要があるかなとは個人的に思います。

 

建築業は外国人の技能実習生制度が適用される分野で

実際のところ建築現場に外国人の方がかなり増えています。

単純な労働力として考えられているケースが多いのではないかと推測しますが、

1つ目の気になる点としてはコミュニケーションが足りているか?という点です。

日本人は日本で住んでいる事で言葉だけでなく文化も大きな相違がないので

伝えたい事が10あった場合に、全てとは言わなくても

半分以上は理解出来る事が多いでしょう。

これは言葉や文化が同じだから、というのが前提だと個人的には思っています。

当然ながら教える側の度量・言葉の選別等に左右されるのは承知していますが

それでも「同じ日本人として理解出来る部分」というのは必ず存在するので

そこで賄える事はあるでしょう。

一方、外国人は日本語が仮に出来ていたとしても

日本の文化まで理解している訳ではありません。

勿論、言葉の微妙なニュアンスも正確にキャッチするのは難しいでしょう。

そういった人たちに対して、教える側の人間がしっかり向き合っているのか?

と考えると、自分は充分ではないかな、と思いますね。

労働者側が必死なのは当たり前ですが、管理をする人間が常にアンテナを

しっかりと立てているのか?と考えると

日本人ならあやふやでもある程度理解出来るものが、

外国人には通用しない、というケースは散見されると考えています。

 

2つ目は賃金の問題ですね。

少し前に大手の企業が下請け叩きをしてきた歴史がある事を載せましたが、

建築業は現場で働く人間までの間に仲介業者が何重にも介入している現状があり

結果的に下の人間が得られる賃金は多くない、という構造があります。

仲介業者をなくせば、と考える人もいるでしょうが

入札した大手企業が現場で働く企業と直接コネクト出来る様な

煩雑な作業をあまり積極的には行わないので

結果的に仲介業者がそこを担っている構図になるのです。

末端の企業は充分に賃金が得られないとなると

安い労働力でどうにかするしかなく、

結果としてマンパワーの質が低下するのは当たり前の話なのです。

管理を適切に行えば…というのは机上の空論に近い話で

それが出来ないから事故が起きるまで気付かない、というのもあるでしょう。

個人的には、今回の事故も含めて起きるべくして起きたもの

と理解する必要があると思います。

 

3つ目としては心理的な部分になりますが

安全を軽視してしまいがち、というところもあります。

『安全』は最も基本的な部分ですが、安全に仕事を進めるというのは

得られる対価が見えづらい事と作業効率のアップには繋がりにくいものです。

なので、「安全に作業をしましょう」と口では言っていても

実際には安全を最重要項目として認識していない齟齬が起きてしまうのです。

建築業以外でも安全を軽視した結果大きな事故が起きているのを耳にしますが

詳細を探っていくと杜撰な実態が見えて来るだけでなく

それが常態化しているケースが殆どなので

安全を軽視した結末だな、といつも感じています。

 

上で挙げた3点はそれぞれが独立したものではなく

要因として絡み合っている様に思います。

1つを解決して次へ進む、というものではなく

3点を同時に解決する形を見出す事が必要だと思いますね。

根本としては賃金が充足していないが故の結果なので、

その部分を解消しながら他の部分も同時進行で進めるのが良いかと。

しかし、ただ大手がお金をたくさん出せ、という単純なものではなく

複数の仲介業者の介入の常態化を是正する必要はあるかと。

それが変わるだけでも末端業者に流れていく賃金量は増える訳ですからね。

東日本大震災時の福島原発処理作業で末端作業者が安い賃金で働いていたのも

構図としては同じなので、それが1つの参考例になるでしょう)

賃金量が増える事で、マンパワーの質の向上を各企業に促し

安全の強化を図る、というのが道筋になるでしょう。

それを怠る企業は淘汰されても言い訳をしてはいけないとも思います。

少なくとも、自分の会社ではかなり気を遣っている部分なので

その点については疎かにすべきではない、と強烈なシグナルを業界が示す

必要はあると思いますね。

 

日本は、企業の中で教育の分野に投資している割合が諸外国と比べて

圧倒的に少ないというデータがあります。

裏を返すと、日本人の規律等が優秀であるが故に

教育をせずともある程度の戦力にはなる、という意味でもあります。

しかし、『安全』はふとした瞬間に崩壊するもの。

個人の力量に任せて、というのではなく

社内のルールを徹底するのに加えて

事故の危険性についても理解が進む事を期待したいですね。

それが企業だけでなく大衆に理解されれば

『安全』が如何に基本的で且つ大事なものなのか

という方向へ舵を切れると思うので。

個人的には是非ともそうなってもらいたいなと思います