究め道

色々感じた事を書くブログです

時間を楽しめない

今年からメジャーで本格的にピッチクロックというものが導入されました。

野球というスポーツはサッカー等と違って1試合の時間制限が

基本的にはないスポーツです。

その為、他の予定が立てづらい等不満を買う事は昔からあり

これによって野球離れが起きている、というのが事の発端。

なるべく長時間にならない工夫として

このピッチクロックが導入された、という訳です。

 

単純に説明すると、ピッチクロックは1球毎の投球感覚を短くして

試合を早く進めようというもの。

規定の時間内に、投手は投球をしなければならず

打者は打席の準備を完了しなければならない、というものです。

投手が違反するとボールが宣告、打者が違反するとストライクが宣告されます。

これに対応する側の選手がかなり苦慮している、というのが

連日記事になっています。

大谷も投手として本日初めて違反したらしく

日本人にもそのシステムが知られ始めている、というところですね。

酷いものになると、3-2のフルカウントから打者が構えなかったから三振した、

ピッチクロックでボールが宣告され、サヨナラゲームとなった等

新ルールの結果と課題がわかりやすく浮き彫りになっていますね。

 

現代の世の中において、ゆっくり時間を使うものが敬遠されているのは

自分も感じています。

以前も載せたと思いますが、スポーツ中継を録画して

ビデオの機能でCMを飛ばして観る、なんてのは序の口で

ドラマ等を倍速再生で見て結末を早く知るとか

SNSのショート動画がウケている、なんていうのもその表れでしょう。

昔は映画館でゆっくり映画を観るというその"時間"こそが贅沢だ

なんて言われていたものですが

それが通用しない世の中になっているのは何とも言えない話。

だからこそ、ピッチクロックという発想になったんでしょう。

 

自分は勿論この制度に反対です。

時間を短くすればOKという単純なものではない、というのが理由ですね。

投手がピッチングマシン扱いされて大変だ、とダルビッシュが発言しています。

近年の野球のパワー化が進み、投手の1球ごとに使うエネルギーは

以前よりも格段に大きくなったのは間違いありません。

そんな中、休む間もなく投げ続けるのはクオリティの維持が出来ない

というのがアピールしたい内容だと自分は解釈しています。

また、打撃戦になった方が盛り上がるだろう、という考えが

メジャー側の根本的な発想としてある、というのも

投手側のクオリティの低下を容認している様にも感じるので

ダルビッシュが待ったをかけている、という事ですね。

 

個人的には賛同したいと思っています。

野球の分かりやすい構図としては投手vs打者という1vs1ですが、

その決着の為にベストパフォーマンスを出し合わなければ

盛り上がりに欠けるのは言うまでもありません。

先日のWBC決勝で大谷vsトラウトの勝負は

ピッチクロック的に言うと違反していたそうですが

今大会では採用されていなかった為

逆にあれだけ緊張感の高まる内容になったと思います。

また、同時に打者と投手の駆け引きもこの中には存分に組み込まれているので

その部分まで考察しながら観戦するのが

野球の本当の面白さだと個人的には思うのです。

一例を挙げると、終盤で一打逆転のシチュエーションの際に

日本のプロ野球では投手が執拗に首を振ってすぐに投げない場面があります。

あれには投手の打たれたくない心理、何を投げようとしているのか迷っている、

打者が次の配球を読みにくくしている…etc

武道でいう居合、間を制そうと互いがつばぜり合いをしているシーンなのです。

それを「規定の時間をオーバーしたのでボールです」と

ぶった切られてはたまったものではありませんし

野球の最も面白いと思える部分をなくされている様で

自分としては残念でなりません。

日本のプロ野球では、メジャーで一定の成功を収めた新ルールは

次年度以降で採用されるケースがありますが

これに関しては採用しないで欲しいと本気で思いますね。

 

野球離れがあるのは勿論承知していますが、

日本ではプロ野球選手が少年野球に指導にいったりするなど

草の根活動を地道に行っています。

1つの行動で劇的に変化する事はないと思うので

こういう活動をしっかり続けていく事が

根本的には最も効果的な事だと個人的には思っています。

勿論、現状に甘んじるのも良いとは思えないので

新たな展開は常に考える必要があるとも同時に思います。

それが何か?と問われると即答は出来ませんが

野球が好きな人が色々なアイディアを持ち寄って

本気で考える事が大事なんじゃないかな、と思いますね。

 

ともかくですが、このピッチクロック。

しばらくは我慢するしかないのかもしれませんが

正直愚策だと断罪すべき新ルールだと個人的には思います