少し前に西武vs楽天の試合を観たと書き込みましたが、
この前神宮でヤクルトvs日本ハムの試合も観てきました。
今回のチケットは妻の計らいによるものなので、
ありがたいと思いながら2人で試合観戦して来ました。
5月26日の試合で、日ハムが勝った試合だったのですが
端的に言うなら、2試合連続サヨナラ負けをしていた日ハムが
底力を見せて逆転勝ちをする派手なゲームでした。
しかし、そんな言葉だけでは纏められない程、
ある程度の知識を持っている自分からすると
野球の奥深さが随所に出ている試合でした。
先発だった日ハム・伊藤とヤクルト・小川は共に充分評価出来る出来でした。
伊藤は4回だけ突如制球を乱し、その隙を逃さなかったヤクルトが
猛攻で3点を奪取しましたが、それ以外ではヤクルトに大きな見せ場を作らせず
6回を粘投。試合を作る、という先発の役割を果たし、
去年の活躍がフロックではない事を証明したと思います。
今後のエース格として期待出来るピッチングでした。
小川は貫禄充分のピッチング。
今季好調の松本以外にはほぼ何もさせなかったと表現して良い程
良質なピッチングを続け、球数を気にしなければ
最後まで投げ切るくらい試合を制圧していたと思います。
逆に言うと、替え時が難しいと表現出来る程好投していましたね。
フォーカスすると、野球の奥深さを感じたのは6回裏のヤクルトの攻撃時。
4-2でヤクルトリード、無死一塁で打者は投手・小川。
ヤクルト側の心理からすると点差を広げて安心したい。
日ハム側からすると点差を広げられると逆転はかなり厳しい。
結果、セオリーとしてはバントを選択する場面です。
この場面で、小川は投球前からバントの構えを見せます。
日ハムは投球と同時に一・三塁手が猛烈にチャージ。
投球はボールでしたが、バントをさせない重圧を小川にかけます。
これは、わざとボールにして打者に重圧をかけつつヤクルトの様子を伺った
と解釈するのが正しいです。
この考えはプロ野球のリーグ戦ではセオリーで、
日ハムはセオリー通りに動いたと言えます。
一方、それを見たヤクルト側は2球目にバスターでヒッティングに変えます。
前に突っ込んで来る野手に対して、バントよりもヒッティングの方が
チャンスが広がる可能性が高いとヤクルト首脳陣が判断した形です。
勿論、打者が小川だったというのもポイント。
プロ野球で長年プレーしているからこそ出来る技量で、
ルーキーや若い選手にそれを求めるのはなかなか酷なので
小川だから出来る、と思ったのでしょう。
しかし、結果はライトフライ。進塁は叶いませんでした。
日ハムとしてはバントのケアは当然ですが、
ヒッティングに変更してくる可能性も考慮した為、
伊藤に「高めの直球」を要求しました。
ヤクルトとしてはバスターをする事で「ゴロを打つ事」を期待しており、
ゴロを打つには難易度が高く、且つバントとしては難易度が高くない球を
日ハム側が選択した訳です。
この洞察力を確実に実行した日ハムの捕手・宇佐見と
要求通りに投げた伊藤によって、日ハムはピンチの芽を摘む事に成功。
この回は0点でヤクルトの攻撃を終える訳です。
このシーンに関しては日ハムに軍配が上がりました。
8回表に日ハムが1点を取り4-3になった展開で
8回裏のヤクルトの攻撃。
日ハムは反撃の機運を高めたいから勿論無失点を狙い、
ヤクルトは日ハムの勢いを止める意味でも点が欲しい場面。
二死ながら長岡が二塁打を放ち、二死二塁。
この場面で、ヤクルトは代打の切り札・川端を投入。
川端が期待に応える形でタイムリーを放ちます。
日ハムからすると絶対に点を与えたくない場面でしたが、
その打撃技術をいかんなく発揮した川端が
日ハムの思惑を見透かした様に放った一打は
ヒットにする、という彼の技術が詰まったもので
5-3になった瞬間、自分は「これはヤクルトの勝ちだ」と思いました。
8回までの試合展開と手の打ち方を見て
試合巧者だったのはどこを切り取ってもヤクルトだったこと。
日ハムも上記で述べた様に随所にプロの技術を見せたものの
9回のクローザー・マクガフは今季無失点を続ける去年の胴上げ投手。
ヤクルトの方が一枚上手だった、と結論付けました。
しかし、ヤクルトのプラン通りに進んだ試合は
マクガフのまさかの乱調により5-5の振り出しに。
流れを考えると試合に勝つにはここしかない、という9回裏で
ヤクルトは2番からの打順で点を取れず。
最後には勢いを完全に失い、日ハムが延長10回に逆転し、勝利しました。
ヤクルトからすると、マクガフの乱調さえなければ
ゲームプランとしてはこれ以上ない出来だったので
繊細な試合運びが見て取れました。
この試合運びや試合巧者というのはセリーグでは特に特徴的で、
近年で例えると落合中日や権藤横浜の得意分野でした。
一方パリーグは投手と野手の勝負をメイン構図にするのが特徴で
対決に勝利する為に力や技を磨く、という傾向があります。
どちらが良くてどちらが悪い、という話ではなく
大雑把に言うならスタイルの違い。
セリーグの緻密さは玄人を唸らせる魅力がありますが、
パリーグの試合の方が構図がハッキリしている事もあって
近年ではファンに支持されやすいのだと思います。
勝敗については紙一重な部分もあるので
1つの試合だけで結論付けるのは良くないと思いますが
例えるなら『武士の居合や間を楽しむのか、力量を楽しむのか』
によって見る視点は変わってくると思いますし
それぞれに良さがあるので、善し悪しについては割愛します。
(付け加えると、パリーグは綿密なプランを組んでいないとは言いませんし
セリーグも対決構図をないがしろにしているとも言いませんのであしからず)
交流戦はそういったスタイルの違いが1つの試合で両方観られるので
正直に言うと楽しいです。
賛否両論あるのは知っていますが、
個人的にはこういうものは続けてもらいたいな、と
いちファンからすると思います。
思い入れの深さもありますが、野球がこれからも最高の娯楽であって欲しいので
プロだけでなくアマチュアも含めて
野球を楽しめる人が増えていって欲しいなぁと切に願います