究め道

色々感じた事を書くブログです

問題は球数制限だけ?

前の文章でトミージョン手術の事について触れたので、

今回は、前回のテーマに関連した深堀りをしたいと思います。

 

肘の腱が損傷した際の再建手術としてトミージョン手術は

割と聞き慣れた言葉になる様になりました。

肘の腱の損傷の1番の問題が「投げ過ぎ」というもので

アメリカでの考えを発端に日本でも投手の故障を防ごうという取り組みは

かなり浸透してきている様に感じます。

最もわかりやすい指標として球数制限がある訳ですが、

それをすれば全てOKなのか?と言われると

これについて桑田氏や上原氏をはじめ実績を残した名投手が

警鐘を鳴らしています。

これについては自分も同感で、非常に根深い問題でもあると思っています。

 

ここで言われている球数制限は「公式戦での投球数」を言っているのですが、

メジャーでは先発投手の球数を100球前後を1つのメドとして考えています。

日本もそれに倣っている訳ですが、

メジャーの投手は中4日で登板しているだけでなく

日本よりも数倍の移動距離を経て行っている訳です。

つまり、5日に1度100球を投げる上に、移動時間の長さ=休養が短い

という環境で登板しているのです。

日本では中6日が通例で、状況によっては中5日での登板もありますが

簡単に言うなら7日に1度100球を投げる、という事になります。

登板間隔が長い上に移動時間もアメリカほど長くはないので

休養がしっかりとれていればもっと投げても良いのではないか?

というのが桑田氏や上原氏が述べる見解です。

更に両氏が挙げるのが、先発投手が100球前後で降板する事によって

救援投手の負担が重くのしかかる、という事実です。

先発投手が100球前後投げる場合、失点や四球などのロスが

殆どない場合で7回くらい、ロスが多くなると5回しかもたないケースも。

加えて、先発投手が試合を作れなかった場合、

早期のイニングに救援投手が登板する事もよくある話。

単純に先発投手が投げ切れなかった残りのイニング数が多くなればなるほど

救援投手陣の負担は増すばかり。

もっと言えば、救援投手陣はどの場面で登板するかわからない為

毎日ブルペンで肩を温める為に投球練習を繰り返すのが通例なので

それこそ「投げ過ぎ」という根本的な問題が出て来るのです。

現代野球においてしっかり試合を作る、

イニングを消費する投手は価値が高いと言われる様になっていますが、

それは球数制限の観点から来ている、と言えるかもしれませんね。

 

前の記事で球速が上がった事によって身体の負担が増えた事に触れましたが

勿論、肘をはじめとして負担が生じるのはそれだけではありません。

かなり前に書きましたが、滑るボールをしっかりと握る為に

投手は握力をかなり使うのですが、瞬間的に握力を高めようとすると

肘への負担はかなりあるので、これも一因だと思っています。

スピン量が増えると総じて打ちづらくなったりするので、

これについては是非があるところですが、

ローリング社の滑るボール問題等用具で解決出来るのであれば

それは選手の為にも取り組んで欲しい問題だと思います。

 

投球フォームが身体の負担を変動する事も充分考えられます。

アメリカでは投球フォームをあまり矯正しない事で知られていますが

そうであるが故に物凄い選手が出て来るケースがあったり、

ケガで苦しむ事もあったりなので、

ここも避けて通れない話だと思います。

 

そして、これは日本特有の問題ではありますが、

マチュアスポーツで勝敗を決する際に用いられるトーナメント制が

優秀な選手を使い倒してしまう、というのも問題かと。

筒香選手が以前から提唱しているリーグ制に賛同するチームが

近年増えてきているというニュースを目にしますが、

それでもまだまだ少数派の考えである事は事実ですし、

最近で言えばロッテの佐々木朗希投手が高校野球の際に

怪我のリスクに監督が配慮して登板を避けて敗退し

かなり物議を醸したのは記憶に新しいところです。

監督の英断を支持する人もいますが、他の選手の甲子園という夢を絶った、とか

甲子園で活躍する姿が見たかった、という声も多数ありました。

正直、当事者でない人たちには色々言われたくないところだと思います。

自分は高校時代に怪我で苦しみましたが

それでも監督やチームメイトには感謝しかありません。

弱小校ですらその絆というは外の人間には理解出来ないもの。

強豪校ならではのジレンマも当然あるとは思いますが、

選手や監督本人たちの気持ちを汲み取って欲しい事もあります。

その中で監督が考え抜いた決断なので、それは支持されて良いと思いますし

現在の状況を見る限り、少なくとも佐々木投手の未来は

まだ明るいままになっているのは嬉しい事だと思います。

少し話が逸れましたが、トーナメント制にする事で選手が消耗してしまう

現在の制度やチームとしての考え方も問題がない、とは言えないでしょう。

 

色々な問題が複雑に絡むこの話。

一番大事な事は、情報は常に更新されるので

その情報の真偽を考えながら、選手や指導者自身のアップデートを

続けていく事なのではないかな、と思います。

そして、野球が好きな人たちも、好き勝手に言いたいのであれば

自身の情報が確かなものであるのか?という事を常に疑いながら

意見を押し付ける事無く議論を深めていく事が必要な事だと思います。

そうでなければ、「あの人の考えは古い」なんて

一蹴されてしまいますからね。

成熟された議論を望みたいところです