究め道

色々感じた事を書くブログです

哲学者の様に

昨晩ですが、サッカー日本代表監督を過去に勤めていたイビチャ・オシム氏が

亡くなったというニュースを目にしました。

日本に来日したのは2003年、ジェフユナイテッド千葉の監督に就任。

日本では来日当時は騒がれませんでしたが、

ジェフを瞬く間に強豪チームへと変貌させた手腕は素晴らしく

そうであるが故に日本代表監督へ引き抜かれる事になります。

(それによってジェフが弱体化してしまったのは残念ですが)

ジーコが退任した際に白羽の矢が立った訳ですが、

脳梗塞で倒れるまでの約1年間は日本代表もかなり変化した印象です。

それまでは中田・中村・小野等のスター選手を中心に戦うスタイルでしたが

オシムはジェフ時代の選手を呼びながら日本代表のトレーニングや

世界での戦い方などをレクチャーしながら戦っていく感じで

個々のスキルよりも体力と戦術を重視した監督でした。

また、彼の言い回しが非常に独特で、所謂オシム語録と呼ばれる様な

ウィットに富んだ会見もまた観る側には新鮮に映りました。

2007年に脳梗塞で退任してから現在まで、

「彼が日本代表監督として4年間請け負ったら

日本代表はどうなっていただろうか?」と今でも想像を掻き立てられると共に

そんな惜しむ声が止まない人物でしたね。

 

オシムユーゴスラヴィア代表監督を勤めた経験があるのですが、

当時は紛争が至る所で起きていた為、代表選考も難儀したとか。

政治的な助言を数々受けながら、自分の意思を貫き通した監督でした。

W杯の初戦でメディア等の助言通りの選手を起用して敗北。

それを見せた上で2戦目以降は自身のイメージするチームで戦い、

結果としてベスト8に残る快挙を見せました。

当時の事はリアルタイムでは知りませんでしたが

「お前たちの言う通りにしても勝てないのだ。私のやり方を見ろ!」

と言わんばかりの起用だったそうで

それで結果を残すというのは自分の能力の証明をしたというほかないでしょう。

サッカー後進国だった日本に来てからも騒ぎ立てるメディアを

自身の発言を通して真の強さを手に入れる為に何が必要なのかを

常々考えている様子で、素人のいち国民である自分はすっかり魅了されました。

サッカー日本代表がクラマー氏によってはじめて強くなったというのは

日本代表の歴史において外せない事実ですが、

リアルタイムで知らない自分からすると

サッカーの面白さ・奥深さを教えてくれたのはオシムですね。

恐らく、多くの日本人が戦術論について色々語れる様になったのは

欧州サッカーがテレビで観られる様になったのと

オシムが日本人にサッカーの知性を植え付けてくれたから

だと個人的には思っています。

(それまでは野球以外のスポーツを深く語れる人はあまり見かけなかった印象です)

自国に戻って静養を続けていても日本代表の事を気にかけていた様で

選手だけでなく多くの日本人から尊敬される人物だったと思いますね。

 

有名だったのは「考えて走るサッカー」ということ。

サッカーはキック力やスキルは華々しく見えますが、

動きの質を選手にも観る側にも求め続けた監督は彼だけではないでしょうか。

それを外に向けて発信し続けたというのが革命的であり、

日本人の目を肥えさせた1番の要因だと思います。

点を取る選手がクローズアップされがちですが、

「あのポジションに〇〇選手がいるのは秀逸だ」と褒めるのは

近年の日本代表監督にはいないと思います。

試合のテレビ解説が同じ事を言ったりする事もありますが、

そういうところに目を向けて観ると面白いんだという事を

教えてくれた人だと思いますね。

例えるなら、野球でいう野村克也氏みたいな人ですね。

 

自分は信者という訳ではないですが、オシムがジェフの監督をしていた頃から

彼のサッカーはとても面白いと見ていて感じていましたし

それまで点が入るシーンの時だけ騒いでいた自分が

彼によって本当の意味でサッカーの奥深さを知りました。

野球一辺倒だった素人の自分にサッカーの面白さを伝えてくれた彼には

本当にリスペクトしかないですし

今後そんな人物が日本に現れるのかどうかを考えると

それだけ惜しい人物だったと思いますね。

 

オシムについては本当にまだまだ書きたい事もありますが

今回はこの辺でおしまいにしたいと思います。

願わくば、天国から引き続き日本の事を気にかけてくれると

個人的には嬉しいです。安らかに